薄蒼色の、どことなく不安定な感覚に誘われるそのパンフレットを初めて見た時から、観てみたいなぁと公開を待っていました。
混雑が予想されたので上映時間の1時間30分前に並んだのですが、既に入場整理番号は80番。
恐るべし、西川監督・・・・恐るべしオダジョー・・・・。
実際見終わって本当に「恐るべし」と思いました。
今後同監督の作品は劇場に観に行くと思いますし(一作目の『蛇イチゴ』は早速近々DVD入手予定です)、オダギリさんが出演する映画も要チェックになるでしょう(『BIG RIVER』も公開中)。

東京でカメラマンとして成功した猛(オダギリジョー)は母の一周忌で久々に帰郷。
実家に残り父と共に家業を継いでいる兄の稔(香川照之)に誘われ、幼なじみの智恵子(真木よう子)と三人で近くの渓谷に遊びに行く。だが渓谷にかかった吊り橋から智恵子が転落してしまう。その時そばにいたのは稔一人だった。
事故なのか事件なのか・・・裁判が始まる中、次第にこれまでとは違う一面を見せるようになる兄・稔に対して猛は・・・・。(映画チラシより抜粋)
このタイトルの意味、深いです。
“ゆれる”吊り橋と、兄弟の間での“ゆれる”思い、二転三転して“ゆれて”いく転落状況の映像。
正直に言って観終わった今、本当はどれが真実だったのか分からなくなりました。そういう意味で、ベタな言い方かもしれませんが観ている者も一緒に“ゆれて”いました。
兄弟があれほどまでに葛藤し(おそらく同姓の兄弟・姉妹でなければあそこまでの葛藤は無かったと思います)、訣別以上の残酷な引き裂き方を双方がして、それで果たして再生はあり得るのか・・・ラストカットは複雑で重い余韻を私に残しました。
シアター内の暗転が解けてもすぐには席を立てない、そんな感じでした。
奔放でありながら何処か純であった弟と、地味に真っ当に生きてきたなかで何処かに鬱積したものを抱え込んでしまっていた兄と。
ラストでは結局どちらも純であり、どちらも鬱積したものを抱えていたのかと思わされるけれど、そんなふうに立場が微妙に変化していく二人を、香川照之さんもオダギリさんも、素晴らしい名演で(目の動きや顔の筋肉の動きなんかで)見せてくれています。
香川さんの、留置中の接見で弟・猛へ毒づくシーンには鬼気迫るものがありました。サラブレッドで頭脳も優秀な俳優さんが表情一つであんなに狂気を表現できるなんて・・・やはり凄い俳優さんです。
それからオダジョー・・・はっきり言ってチンピラ的なイメージが先行していた中(スミマセン、私の中で、ですが)、確かに今回も事故破滅的でいい加減な男として描かれていた猛ながら、一転、自己や家族と真摯に向き合うようになる猛を、ボロボロに傷つきながら泣くのを必死に堪えている少年を感じさせるように演じていて、私はその危うい表情の“翳”にすっかり魅せられてしまいました。
肉親であっても、否、肉親であるからこそ、できてしまった心の溝は深いのでしょうか。
かつては甘えられるのが当然だった仲であるからこそ、そうでなくなった時の失望は憎しみに変わるのでしょうか。
ただ、再生を遂げるには余りに失ったものが大きすぎる・・・・。
まず一人の女性の命。
関わった人達の生活の激変。
特殊な場所での7年という歳月。
年齢のせいか重なる心労のせいか、ボケてしまった父親(伊武雅刀)が奇妙な行動を見せるシーンがとても痛々しく映りました。
最後のほうで、切れたかに見えた絆をつなげようとしてくれた新井浩文演じるGS従業員に、私はとても救われる思いがしました。
しかし再生は難しい。
でも再生して欲しい、と強く願わずには入られない。
家族というもの、そしてその業。困難だけれど、それでもその業を受け止めて生きていって欲しい・・・そんな監督の願いがそこにあるのでしょうか・・・。
決して解りきれていないと思うだけに、今後何度も反芻しそうな印象深い作品として自分の中に残ると思います。
このシネリーブル梅田は久し振りでした。

シネリーブル神戸は地下にあるのですが、ここはビルの3Fにあり、好天の日にはJRのコンテナヤードから大阪のビル群まで一望することができます。
入場待ちの時間、さわさわと“ゆれる”木々を眺めながら「映画が終わったら夏を感じる発泡性のあるお酒を飲もう」と思っていました。
帰りに寄った阪神デパ地下でシャンパンコーナーを見ていましたが、少し目線を変えれば・・・季節柄あるんですね〜、発泡性の日本酒が。
多くはスパークリング清酒と言われるような低アルコール(7-8%)のものですが、中にはしっかりとした味わいのモノもあり、購入したのは安芸虎・純米吟醸「素(そ)」うすにごり活性生酒です。
(アルコール14%)

飲んでみれば、まずは華やかな甘い果実香がふわぁっと広がり後口で麹香がプンと結構強く香ります。(この麹香、私は好きですが。)
炭酸性がサラリ感を出してくれていますが、決して軽いという感じはしません。
甘口ですが、くいくい飲んでいると確実に酔いが来ます。食中向きではありませんが、軽くはない食前酒?として良いかも。
私も食前酒として空腹状態でくいくい飲んでいましたら、突然周りの空気がふわりと変わりました。
ふわりふわり・・・・映画でゆれて、お酒でゆれて・・・・・・という非常にありきたりな言い回し(すみません)で今日のブログを締めくくりたいと思います。
見てこられたんですねー。かなり羨ましいです┌|∵|┘
とにかく香川照之もオダギリジョーも自分中ですごい俳優で、何回かブログの記事にしたくらいなんです。
何とか見に行きたいっす(◎-◎)
なんとか理由付けて大阪でちゃおうかな 笑
香川さんとオダジョーをたっぷり観られる映画です。頑張って理由付けて??観にいって下さい。(^_^)
画面の創り方もいいです、凄い監督さんです。
オーマイニュースの方で記事にしました〜☆
ほんとに深い映画ですよね(・o・)
DVD買っちゃいますよ!
http://www.ohmynews.co.jp/News.aspx?news_id=000000003217
「兄弟の絆がどれほど残酷で切ないかを・・・」という表現にどきりとさせられました。
ホント、オダジョーは無限大ですね。
それから西川美和監督、最後にポンと観る側に其々の結論を委ねたのには良い意味での驚きがありました。
>最後にポンと観る側に其々の結論を委ねたのには
そうですね。すごく真面目な投げ返しが心にずしっときましたね。
素晴らしい監督ですね、西川監督。
コメント頂き ありがとうございました!(嬉)
幸いなことに 再上映でやっと観れました。
(掘り起こしてしまい ごめんなさい)
べろんぱさんの仰るように、
観ている側も一緒に”ゆれる”作品でしたね。
実は 映画館で観ている時と又違った印象で
あとからジワジワきています。
登場人物それぞれに切なさを感じ胸が痛みますが、
GSの青年の存在に私も救われた気がします。
本当に秀逸な作品でした。
またお邪魔させてくださいね。
私もちょくちょくお邪魔させていただきます。anyさんのブログ、素敵です。
やっぱり映画館で観てこその映画ですね、・・・いろいろあって観られない時もあるんですけどね。