2006年07月19日

カーテンコール  

ブログを読んでくれている友人が、『玲玲の電影日記』『マジェスティック』と続いたところで、映画館を愛した人々の映画としてはこんなんもあるよと勧めてくれたのが『カーテンコール』(佐々部清監督 9月に新作『出口のない海』公開予定)
私も昨年の公開時に気になりつつも観ていなかったので早速「映画館へのオマージュ」繋がりでレンタルしてみました。

              
             カーテンコール.jpg 
               (c)[カーテンコール]製作委員会

story
 東京の出版社で働く若きライターの香織(伊藤歩)は、大物政治家のスキャンダルをスクープしたことで福岡のタウン誌編集に異動させられる。
そこで彼女は、「昭和40年前後に下関の映画館にいた幕間芸人を探して欲しい」という読者からの一通の葉書により、その映画館「みなと劇場」を取材する事になる。先代の支配人が既に他界し、殆ど当時の記憶の無い今の支配人に代わって応対してくれたのは、当時から働いているモギリの女性・宮部絹代(藤村志保)だった・・・・・。
 

 オープニングから香織が福岡にやって来るまではやや説明的でおざなりな感じもしましたが、絹代の記憶をたどって昭和の頃のセピア色の映像に入る辺りからすぅっーと映画に引き込まれていきました。

 映画っていうのは、映画を上映してくれる映画館の人達の(いわば裏方さんの)存在があって初めて我々の目に届くのだなと改めて感じました。「創って終わり」なのじゃない、それを配信してくれてこそ我々はその感動に触れる事ができるのですね。
まず最初にそんな事に気付かせてくれましたね、この映画は。

 映画館に正式には雇われていなかったけれど、ひょんなことから幕間に立つようになった修平(藤井隆)は、幕間芸人としてだけでなく、映画のビラ配りにいたるまで全般、それはもう一生懸命に働きます。
でも時代は移ろい、映画は衰退の一途。しわ寄せはやっぱりピラミッドの下部に来ますよね。
幸せな結婚をして一女・美里(成長した美里は鶴田真由)をもうけながら、映画館をクビになった修平は出稼ぎに出たままやがて行方知れずとなって
しまいます。

 中盤以降、忘れ去られた幕間芸人・その親子の別離と再会を描いた“ほのぼのとした情愛”路線の映画だと想定していた私にとっては思わぬ展開がありました。
生き別れとなった芸人・修平は実は在日朝鮮人だったということ。
修平は正社員にならなかったのではなく「なれなかった」のです。
ここで映画の趣がかなり変わったことは否めません。やはり、映画を観ている今この現代でも、そして我々日本人にとってもデリケートな問題なんですね、これは。

成長した娘・美里の言う台詞、「うちがどれだけ苦労してきたか、あん人(父)には分からんと思う。」
これには悲しみを通り越して“凄み”が感じられました。
それでも二人の再会(母親、つまり修平の妻は既に死去)に奔走する香織。それは香織にとって“自らの禊”の意味もあったというもう一つのストーリーも描かれています。
このあたり、かなりこだわってこの在日への差別問題に迫っていこうとする監督の姿を感じました。
(ただ一つ疑問に思うのは、監督にとってまず「この問題ありき」だったのか否かと言う事です。この問題を描きたかったのか、一つの演出手段としてのものだったのか・・・。何となく釈然としなかったのは確かです。)


 しかしやはり、この映画の基本は「親子の絆・人間の情愛」にあったと思いたいです。
親子の愛、夫婦の愛、打ち明けないまま抱き続けた恋の想い、見送る愛、色んな想いが描かれています。
絹代さんの秘めた想い、あれは切なかったなぁ・・・。全ての事に対して貪欲になれないまま齢を重ねてしまう、こういう人はいつの世にもいるのですね。
ふと、自分の故郷の両親や友人や、過去に別れたままの人や、そんな人の面影をたどらせてくれる、そんな映画といえるでしょうか。

(↓ネタバレですみませんが、)
最後、美里と修平が、涙涙の抱擁ではなく、涙に濡れながらもお互いに“満面の笑顔”で向かい合えたことが、私は本当に良かったと思いました。
お酒の力もあってか、またまたボロボロ泣いてしまいましたもうやだ〜(悲しい顔)


伊藤歩もさることながら鶴田真由ちゃん、いいですねぇ。
メークダウンして不幸な思い出を抱いたままだった美里を演じ、父親との再会では美しい満面の笑みを湛えた美里を演じ・・・。
アイドルっぽかったのはもうずっとずっと昔の事なんですね。これからも応援したいです。


今日は仕事帰りの1時間と少し、北新地に名を馳せる某BAR仕事関係の御方に連れていって頂きました。
先日ご紹介した書物『TO THE BAR』の中の一店です。
板チョコを思わせる扉を開けるとそこは別世界・・・見て下さい、このボトルの居並ぶ店内を。
     BAR2.jpg> BAR1.jpg  

 Back(写真右)の棚にはウィスキーファン垂涎物のレアモノのボトルがズラリと並んでいます。Front(写真左)のボトルにも私が生まれた年のナポレオンのブランデーが・・・・。「ウチはそうお高くとりませんからこのお酒はグラスで1万円と少しで飲んで頂けます。」と仰るマスター氏。・・・がく〜(落胆した顔) い、一万円!?グラスで!?

ですね、夢のお酒・・・それでいいんじゃないですか、いつか味わう時があれば、と思い描くお酒で。

夢・・・夢・・・夢で逢いましょう、そんな感じの夜。

私は絹代さんと夜通し飲んでみたいです・・・絹代さんは飲めなさそうな人だけど。

posted by ぺろんぱ at 22:31| Comment(6) | TrackBack(3) | 日記
この記事へのコメント
こんばんわ┌|∵|┘

この作品、ずっと前から気になってて、ぺろんぱのブログの記事読んで観ました。

>ただ一つ疑問に思うのは、監督にとってまず「この問題ありき」だったのか否かと言う事です。
俺もその部分が気になりました。
演出なのかなって思いました。

この映画は展開が大胆すぎて、凄かったです。
でもそれが人生なのかと思わせるんですけど(^^;;

なんか長い時間と深い愛が素晴らしいかったです┌|∵|┘
Posted by dk at 2006年07月29日 22:06
 dkさん、こんばんは。
展開が大胆、というのは分かります。済州島へ渡るくだり等、描かれ方が早かったですものね。
それが人生か・・・というdkさんのフォローは深いですねぇ。(^_^)

 
Posted by ぺろんぱ at 2006年07月29日 22:24
初めまして、達也です。
『カーテンコール』をレンタルで
観ました。
俳優陣の演技が良く、
特に「藤村志保」さんと、修平の
晩年を演じた「井上堯之」さんが
最高でした。
ただ、僕も在日問題のテーマの
絡め方にチョッと違和感を感じました。
修平のその部分の葛藤が伏線として
あればさらに良かったのかも・・・。

P.S 達也も酒好きです。トラバさせてくださいね。
Posted by TATSUYA at 2006年09月17日 12:13
TATSUYAさん、初めまして。コメントとTBをありがとうございます。原作を読んだらしい友人も、藤村志保さんはハマり役って言っていました。

お酒がお好きなのですね・・・今後ともどうぞ宜しくお願いします。
Posted by ぺろんぱ at 2006年09月18日 11:27
I like Yito Ayumi sang, so I was searching for her movie. If I could, I have to watch this movie someday. Thank you for your review, pellonppa sang!
Posted by 心臓 at 2011年11月04日 19:31
心臓san、Thank you for your comment.

I guess, you love Ito Ayumi san so much.

I think , Ito sann is individual actress in Japan.

She has good works much more, I think! (*^_^*)

Please keep up your support to her !
Posted by ぺろんぱ at 2011年11月04日 20:53
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