2023年05月07日
フルで聴きたい、名前を知りたい
今「フルで聴きたい、名前を知りたい」と思っている曲が2曲あります。
一つは毎週録画して観ているBS-TBSの『 ヒロシのぼっちキャンプ 』のシーズン3・第36話「 君を見つけた夜には 」のエンディングに流されていた曲です。
※画像は番組公式サイトよりの転載です。
番組はもうシーズン7に突入していますが、シーズン3放送時に聴いてからずーっと心に残っている曲です。
オープニング曲は毎回同じですが(「Guaranteed」)、エンディング曲は毎回違った曲で、しかもほんの20秒ほど流れるだけです。
当時ネットで調べましたが分からず、番組制作のBS-TBS社に電話してお尋ねしたのですが「とにかく毎回の編集量が膨大で細部情報までは残せていない」とのことでした。番組のDVDを購入すれば記載があるかと問いましたがDVDにもそこまでの記載は無いとのこと…残念でしたが結局分からないままで今日に至っていました。(書き添えておきますが、電話の女性はとても感じ良く親切に応対してくださいました。)
でもつい先日このシーズン3の第35・36話が再放送されて図らずも再びその曲を聴くことができたのは良かったです(ほんの20秒だけでも)。
何というか、心の深いところに降りてゆくような、そんな感じの曲です。いつか奇跡的にこの曲のことを知る日がやってくるといいなぁと思っています。
※某回画像、番組公式サイトよりの転載です。
もう一つは、こちらも毎週録画して観ているNHK-BS.P.のドラマ『 グレースの履歴 』のエンディングに流れる曲です。
私がドラマ評論家と呼んでいる友人Nからのメールで 武田カオリ というアーティストさんの曲と知りましたがタイトルは分からず。今はネット上でも随分話題になっている曲のようですが、こちらはドラマが終了して落ち着いた頃に(今夜が最終話!)入手できるかもしれません。
気になるモノは その‘名前’を知りたいものですね。
‘成り立ち’というか、それが構成されている、内側に持っている、あるいは秘めている ものたちのことも含めて。
NHK朝ドラ『らんまん』(これも毎回録画して観てます)の主人公・万太郎も、出会う草花たちの名を知りたいと願うのはそれらが彼の心の大事な部分を占め続けるからなのでしょうね。
時々通る道で見かけて、紅色の葉と白い花のコントラストが綺麗だったので(別々の樹木です)写真に撮りました。花はサツキですよね。でも隣の紅色の葉の植物の名は??(分かりません。)
世の中は私には知らないことばかり、恥ずかしい限りです。
GWの後半某日、カフェ・COSTAにて。
ここは某ビルの2階奥にひっそりとあって観光客には殆ど気付かれないと思います。経営的に大丈夫なのかと案じつつも、喧噪の街中にあって一人静かにフラット・ホワイトを飲みながらゆっくり過ごせたのは嬉しいことでした。
やっぱりお日さんが差し込むカフェはいいなぁと思いました。
帰り際、マスクの下からでもちゃんと分かる優しい笑顔と丁寧な言葉で見送って下さったスタッフさん。こちらこそありがとうございました。
2023年04月16日
街とその不確かな壁(村上春樹新刊)、そして 横尾忠則企画展のこと
村上春樹さんの6年ぶりの長編となる小説『 街とその不確かな壁 』が13日、新潮社より発売されました。
発売初日にJ書店で買い求めました。手に取るとずっしりと重い一冊でした。
これは1980年に文芸誌「文學界」に発表し書籍されなかった中編小説『街と、その不確かな壁』を、約40年の時を経て春樹さんが書き直し生まれ変わらせた長編小説と銘打たれています。
1980年に出されたものは後の長編小説『 世界の終りとハードボイルドワンダーランド 』(1985年)の原型と言われていて、拙ブログで以前に書いたことですが、私はこの『 世界の終りとハードボイルドワンダーランド 』が春樹さんの長編小説の中では今を以っても最も好きな作品ですので、今回この一冊をとても感慨深く手に取りました。
楽しみに、しかし静かな心持ちで少しずつページを繰ってゆきたいと思っています。いろいろあったけれど、そういう感覚が戻って本当に良かったと思っています。
桜の花も散って、これからは青葉が美しい季節ですね。
友人Nちゃんが招待券を送ってくれていて、『 横尾忠則展 満満腹腹満腹 』(横尾忠則現代美術館)に行って来ました。
開館10周年を記念してこれまでに開催された企画展をダイジェストで振り返るものです。
2020年の『 横尾忠則の緊急事態宣言 展 』で初めてこちらの美術館を訪れていて私にとっては約2年半ぶりの横尾忠則ワールドです。
今回は過去の様々な企画展での作品が集められ 氏がいろんな視点から創作した作品たちが一堂に会されており、まるで大きなオモチャ箱に入り込んだみたいで面白かったです。創作の「苦悩」ではなく「喜び」みたいなものがダイレクトに伝わってくるような、そんな世界でした。
新たな発見だったのは、氏が涅槃像に魅せられ、偏執的とも評されるその収集癖によって世界各地から実に約600体もの涅槃像が集められてきたということ。
説明パネルによれば、氏は「其々の涅槃のポーズに、崇高なものと通俗的なもの、死ぬことと生きること、の表裏一体の関係性」が見えると捉え、それがまさに「横尾作品に通底する特徴」になっているのだとか。様々な涅槃像が所狭しとケーズに収められていた最後のブーズは不思議に深い世界でした。Nちゃん ありがとうね。
あと二週間ほどで今年も1/3が終わることになるのですね。
年月が経つ早さを何かにつけて実感するなんて若かった頃にはなかったはず。
物事はいつも自分が想像する(想像できる)更に一歩も二歩も先の向こうで形を成していってる気がするので、この先どんなことが待ってるのかは全く分かりません。ただ、おそらくもっともっと日々が早く過ぎてゆくであろうことは確か。大事に過ごしたいと思います。
2023年04月02日
グッバイ、レーニン! ( BS録画鑑賞 )
桜が満開の週末でした。
録画していた、BS松竹東急で3月21日放送の『 グッバイ、レーニン! 』( ヴォルフガング・ベッカー監督 2002年制作 )を鑑賞しました。
< グッバイ、レーニン! story >
1989年、ベルリンの壁崩壊直前の東ドイツ。青年アレックスは、10年前に父が西側へ亡命したため母と暮らしていた。母は反動から社会主義体制のこの国に強い愛国心を持っていたが、アレックスは密かに反体制デモへ参加し警察と衝突。それを偶然目撃した母はショックで心臓発作を起こし昏睡状態に…。ドイツ統一の数ヵ月後、奇跡的に目覚めた母へ致命的ショックを与えないよう、彼は統一の事実を隠すべく、あらゆる手を尽くす。(※下記画像とも映画情報サイトより転載 )
コミカルに描かれていますがとてもシリアスな物語。
この「ベルリンの壁崩壊」以外にもきっと、世界のあらゆる地で今も自分の想像など及びもしない出来事がどこかで起きているのであろうと思わされました。
この物語は、母が深く傷付くこと ただそれだけを阻止したいと奔走する息子アレックス(演じるはダニエル・ブリュール)の物語ですが、逆に、その母親が隠してきた真実によって彼と姉アリアーネが深く傷付くことになってしまったことは皮肉でした。父親の亡命の本当の背景を今になって知ることになった姉弟が、父を恨んだ過去の年月を取り戻すことは決して出来ないのだから。
一連の騒動はアレックスのフィアンセ、姉夫婦、母親の同僚・知人を巻き込んで「そこまでするか?」というところまで展開してゆきます。
コトの本質は実は国のあり方じゃなくてこの家族、殊に母とアレックスのあり方なのじゃないか?と何度も思いましたが、「そこまでする」ことの意味が、関わった人たち全ての中に‘それぞれに’あったのかもしれません。
結局は、それらの行為が為したのは ‘余命少ない母に安寧をもたらせた’ ことより ‘家族や友人たちの絆を深めてくれた’ ことに他ならないのだと感じました。一番大切なのは残された者の心に何が残ったか、ということなのだ…と。
アレックスの同僚で西側出身のデニス、東側の元宇宙飛行士・ジークムント・イェーン、この二人の存在が個人的にはとてもよかったです。いいえそういうなら、騒動に加わった家族や仲間はみなそれぞれ独特の魅力を秘めた好もしい人たちだったと思えます。
レーニンの銅像がヘリで吊るされて何処かに運ばれてゆく映像は、当事国の人間ではない私にも不思議な感慨がありました。
前回とは別の友人とまた違ったカフェへ。カフェミーティングもなかなかいいものだなぁと思います。
私はカフェモカをオーダーしましたが、もっと甘いのかなと思いきや意外とビターな味わいで美味しゅうございました。
ビターなモカの味わいを楽しんだ後歩いた散策路には白っぽい花びらの桜が・・・。
でもよく見るとやっぱり薄桃色のソメイヨシノなのかな。
この時この樹の下には桜耳にカットされた黒猫ちゃんが一匹佇んでいて、画的にはサイコーの癒しの場でした、ありがとう。
2023年03月21日
バグダッド・カフェ ---- 何度も観ているのについまた観たくなる
先日 NHKBSプレミアムで放送されていた『 バグダッド・カフェ 』( パーシー・アドロン監督 1987年制作 )。
実はコレ 購入したVHSソフトを持っているのですが、拙宅のビデオデッキが不具合で最近は再見が叶わず…もう何度も観ているのについまた観たくなって録画してしまいました。
本作、「 うら寂れた砂漠のモーテル“バグダッド・カフェ”にやって来た一人の女性と、彼女をめぐる人々との交流を描いてゆく ( 映画情報サイトよりの転載 ) 」物語です。
独特の空気感、個人的にはちょっと夏の終わりを感じさせる寂寥感にも似た空気を感じて、そこに沁み込んでいくように流れるホリー・コールの「コーリング・ユー」の、哀切でそれでいて優しく包んでくれるような感じがとてもイイです。
ジャスミン(マリアンネ・ゼーゲブレヒト)の心が少しずつ解放されてゆくのが嬉しい。
スーツケースを間違えてを着替える服が無くても、着ていたタイトなスーツよりコットンの下着のままの彼女の方がずっと綺麗だった。コットンのインナードレスは何度でも洗い直せばいいのだから。
何といっても好きなのは、ジャック・パランス演じるルーディーが野の花を摘んでジャスミンの部屋にプロポーズにやってくるラストです。
ドアを開けるまでのジャスミンの小さな振舞いがとても素敵。
「ブレンダに相談するわ。」の台詞には 乾いたバグダッドの地に立つ彼女の足もとを清らかな水が自在に流れゆくように感じられて、ああジャスミンはこんなにも解き放たれて自由になったのだなぁとエンドロールでは柔らかい幸せに包まれるのでした。
ありがとう、やっぱり好い映画です、『 バグダッド・カフェ 』。
先日久しぶりに再会した友人とカフェへ。(バグダッドのカフェじゃないですけど勿論)
たまには私も友人に合わせて こんなんもオーダーします。ハニー・キャラメル・ラテ?やったか?? 生クリームの上にとろりとかけられた蜂蜜が美味しゅうございました。
お酒も宅呑みで飲んでいます。
お酒がもたらせてくれる悦びはスイーツから得られるそれとは少し違うような気がしています。
村上春樹さんの言葉にこういうのがあります。
「酒吞みには二種類あって、一つは自分に何かを付け加えるために呑まなくてはならない人、もう一つは自分から何かを取り去るために呑まなくてはならない人」というものです。
自己解釈で分析してみるに私は後者ですが、それに例えさせてもらえるなら、甘いものをいただく時は「自分に何かを足してくれる感じ」がします。お酒は ‘酔うこと’ で「自分から何かを拭い去ってくれる感じ」がします。
すみません、そんなん考えず とにかく甘いものもお酒もどっちも好きなように楽しめばよいのですよね。
侍ジャパン、日本時間明日の決勝戦での勝利、祈っています!
2023年03月06日
晴れた空と 猫侍と 時間と
先の土日は泊りで実家に帰っていましたが、用事が済んでから電車で午後に帰宅。あまりの好天に誘われて荷物を置いてから近隣に歩きに出かけました。
お天気が良くて、お日さんの光を浴びるだけで元気をもらえました。お日さんの力って本当に凄い、本当に凄いよ、ありがとう。
今ちょっと 映画とかは軽いタッチのものしか観る気になれず、先日‘猫の日ウィーク’に放映されていた『 猫侍 劇場版 』( 山口義高監督 2014年制作、BS松竹東急にて放映 )を録画していたので遅ればせながら鑑賞。
ドラマ版は随分前に観たことがありましたが映画は初めてでした。今よりちょっと若い北村一輝さんと、お目目がキラキラで重量感ある白猫‘玉之丞’に魅せられたのですが、普段なら別に何とも思わず流していたであろう台詞がこの時は心に刺さりました。
※画像は映画情報サイトより転載
かつては剣の名手で人斬りと恐れられていたのに何故か突然人を斬れなくなってしまい、浪人と成り果て傘貼りをして暮らす班目久太郎(北村一輝)。剣を交えることになった敵方の用心棒(寺脇康文)から「お前そんなことでこれから一体どうやって生きてくつもりだっ!」と強く問われ・・・。班目久太郎が言ったのですよね、ひと言「分からんっ!」って。
その時なぜか心が少し軽くなった気がしたのです。そうか分からんくてもええんや、と。どうしてそんな状況に陥ってしまったのかも、これからどうすればいいのかも、今は分からなくてもいいのだと。
「分からんっ!」の後に「・・・だが大切なものは守ってゆく。」と彼の言葉は続くのですが(彼にとってそれは出会った玉之丞と家族)、そこも あぁなるほど と。大切なもの、それだけは失くしてはならないもの、それを分かってさえいればいいのかもしれないな、と。 言葉がすとんと心に落ちてきた感じでした。
軽い気持ちで観た映画にこういう救われ方をするとは思ってもいませんでした。ありがとう、猫侍。
NHKの気象予報士・南利幸さん予測(^-^)によると東京の桜の開花予想日は3月15日だそうです。もうあっという間なのですね。
季節は巡る。。。
友人Kが「たいがいのことは時間が解決してくれるとあたしゃ思ってるんだよねー」って言っていたのを思い出しました。
2023年02月21日
「 上を向いて歩こう 」を聴きながら
前の前の週末(11-12日)はお天気が良くて空がきれいでした。
見上げた時に空の青、雲の白がくっきり綺麗だと やっぱり癒されます。
打って変わって先日の週末(18-19日)は雨天。
春の雨というより私にはちょっと冷気を含んだ雨に感じられて、外出時には手指に血が全く通わず冷たく真っ白になりました。私の持病で、こうなると感覚もなくなって物も上手く掴めないんですよね。
気持ちも上向かないままで‘W晴れない’日だったのですが ふと「行ってみようかな」と先のブログに挙げていた安田青風展に足を運んできました。
傘をさしての道行きは、それはそれで雨音が 心のザワザワ感 を沈めてくれる気もして ‘雨には雨の良さもあるんやなぁ’ と思ったりしました。
※傘をさしながらのスマホ撮りで何とも不細工なアングルですみません
『 歌人 安田清風展 』(姫路文学館にて)。
作品数が少ないためか展示ブースはいつもの半分ほどでしたが、地元所縁の歌人とはいえ名前すら知らなかったこの安田青風という歌人の歩みを 一から知るには充実した展示内容だったと思います。
居住まいを正すような感覚の歌が多かったように思えた中で、ふと言いようのない哀しさに包まれる感じの歌もあって、そういうのに惹かれて幾首かを書き留めて帰りました。
以下はその歌(一つ目は前回のブログにも記していたもの)です。
ー みづからの歩幅で歩くほかはない 道にさく花たんぽぽ・すみれ ― (以下、全て 安田清風)
ー 木の実とか草の根とかを我愛す いのちをもちてしづかなるもの ー
ー ふるさとにたゝひとりなるこころなり やまには山の花さきにけり ー
ー 空をゆく雲をうつして沼はあり くもに遊べる水くさの花 ー
ー 嶽山に 月も月を追いかくれつるそのかなしさは変ることなし ー
この世にいない人を想って詠まれた歌はもの哀しいですね。
先日友人女性が「元気の出る歌発見、YouTubeで聴くべし!」とメールくれたのはRCサクセション版のロックな「上を向いて歩こう」でした。なるほどキヨシローさんの‘アウッ!’のシャウトが刺激的だった、ありがとうね。
お礼に(?)私からは、大好きな「 上を向いて歩こう / スターダストレビュー版 」(昔コンサートで聴き惚れた)を送りました。こっちは切ないバラードになっています。でも友人も気に入ってくれたみたいでヨカッタ。
いろんな意味で‘本当の春’を待つ今日この頃です。
2023年01月29日
雑感 2023.1月
10年に一度と言われた今回の最強寒波、いつもの景色が一変した朝でしたね。
電車が止まると心配する一方で、見慣れぬこの雪景色が何かを変えてくれるんじゃないかと窓外に向けて祈ってみたりもしました。
実家帰りの昨日、ふと見上げた空に浮かんでいた雲。
なんとなく鯨の形に似ていて、先日天に召された 淀ちゃん を思い出しました。
そういえば淀ちゃんが逝って海への埋葬が決まった翌日に友人Kちゃんから「クジラ雲をたくさん見た。空から淀ちゃんを迎えに来たんかなって思ったよ。」っていうメールが来たっけ。 淀ちゃん安らかにね。
今読んでいるのは昨年12月に刊行された、伊集院静氏による『 旅行鞄のガラクタ 』(小学館)です。
<こんな本>
伊集院静氏が旅先から持ち帰ってきた品々への思い出を綴ったエッセイ集。全日空グループの機内誌『翼の王国』誌上で連載されたスペイン、フランス、ポルトガル、スコットランド、アイルランド、ベルギー、イタリア、エジプト、ケニア、アメリカ、中国、日本など12カ国の34話を収録。 (※情報サイトより転載)
本となった形で伊集院さんの作品を読むのは私は初めてかも。
未だ読み始めたばかりですが、静謐な印象の文章の中に、唯一無二の ‘旅の手触り感’ みたいなものが感じられます。写真も素敵です。少しずつですが、何となく心を落ち着かせるためにもページを繰っています。
いろいろ思う事ばかり抱え込んでしまって(難儀な性格)、行きたいと思っているのに中々足を運べていない『 歌人 安田青風展 』(姫路文学館で開催中)。
街角の掲示板に同展の告知ポスターが貼られていて、そこに掲載されていた短歌にとても惹かれたのでした。
ー みづからの歩幅で歩くほかはない 道にさく花たんぽぽ・すみれ ― (安田青風)
会期終了までに行ければよいのですけれど。
2023年01月15日
「 無人島のふたり 120日以上生きなくちゃ日記 」に思ったこと
この本、年末に読み終えてから 中々再びは向き合えずにいました。
さりとて書棚にしまい込んでしまうこともできず、この辺りで一度きちんと思ったことを綴って改めて サヨナラ を言わせて頂こうと思いました。
<こんな本>
「お別れの言葉は、言っても言っても言い足りない。これを書くことをお別れの挨拶とさせて下さい――」思いがけない大波にさらわれ、夫とふたりだけで無人島に流されてしまったかのように、ある日突然にがんと診断され、コロナ禍の自宅でふたりきりで過ごす闘病生活が始まった。58歳で余命宣告を受け、それでも書くことを手放さなかった作家が、最期まで綴っていた日記。(※情報サイトより転載)
ハードカバーを開いて冒頭の6行で一旦めげてしまったことは昨年書いたことですが、診断時に既にステージ4bだった膵臓癌の闘病記とあって内容そのものは辛いものでありながら、読み始めると山本文緒という作家の魅力が過酷な状況描写の中にも満ち溢れていて、改めて‘読ませる作家’なのだなぁと感じました。
そうは言いつつ、完膚なきまでに叩きのめされる苦痛の日々や、自分の人生のエンドを告知されながらも調子の良い日にはその先があることを期してしまう、その両方の思いの狭間に、読んでいる自分自身も置かれてしまうことに耐え難くなった時も多かったです。
貫かれていたのは文緒さんの‘書かずにはおられなかった’思いでした。
それが作家としての性なのか、私にはどのような断言もできませんが、崖の上に立っているような状況を時にユーモアさえ滲ませて綴られている文章のどれもが、掛けがえのないものに感じられたのは確かです。
一昨年の訃報で亡くなられた日は知っているのに、、、読んでいるところが既に最終章に差し掛かってるのに、、、残るページ数もごく僅かと分かっているのに、、、まだこの日記が続くような気がしてしまいました。
だから、9月29日(水)の日記の次のページをめくった時、10月4日(月)の5行の日記のあとはそのページも次のページも全部余白で・・・その時私電車の中だったんですけれど、泣きました。 ※2021年10月13日、山本文緒さんは永眠されました。
最後に一つ言えるとしたら、無人島に「ひとり」じゃなくて「ふたり」でよかったですね、ということです。支え見守ってくれた夫氏への「ありがとう」の想いが行間にすごく感じられていましたから。
山本文緒さま。あらためまして、たくさんの物語を届けてくださってありがとうございました。
思うところあって 先の連休中にふらりと訪れた明石城址でのお堀の一枚。
年に二、三度訪れますが、姫路城と違って観光客はあまりいないので静かにゆっくり一人歩きができるのです。
他にたくさんいた鳥たちの中でこの二羽が、何度となく互いに行く先々ですれ違ってたので撮りました。 通じ合うものがあったのかな…。
2023年01月03日
2022年 を振り返って
2023年が明けましたね。今年もどうぞ宜しくお願い致します。
例年通り、年が明けてからの‘昨年の振り返り’とさせて頂きます。
劇場での新作映画鑑賞は本当にもうブログタイトルを変更しないといけないくらいの体たらくで(昨年も同じこと書いてましたが)3回のみ。別途、DVDやBSなどでの旧作鑑賞は(再鑑賞作品も含めて)約20作品程度でした。
体調が芳しくなかったこと(今も少し)もありますが、それについては早く忘れ去ってしまえるようにと願います。
旧作でも自分にとっては初鑑賞だった映画や、本やTVのドキュメント番組などについて書き残しておきたいことなどを記します。
■ 映画 ■
旧作映画ですが出会えて本当に良かったと思えた、昨年一番印象に深く残ったのは10月16日にブログに挙げた『 セントラル・ステーション 』です。
今日はその他に、ここに挙げていなかった他の鑑賞旧作品についてちょっとだけ書かせて頂きますね。
一つは『 帰ってきたヒトラー 』(ダーヴィト・ヴネント監督 2015年制作 BS松竹にて)で、これは公開時にドイツがヒトラーをコメディーにするなんてと物議を醸した映画でしたが、私にとってはちっともコメディーなんかじゃなく凄く怖かった作品でしたね。主演のオリヴァー・マスッチがもう途中からはヒトラーにしか見えなかった。
ヒトラーが本物であると気付いた女性の台詞「あの時と同じよ、あの時も最初はみんな笑っていた」、そしてヒトラー自身が聴衆を前にして言った「私は君たちの心の中にいる。だから消えない。」の台詞が今も忘れられません。
もう一つは『 ベンジャミン・バトン 数奇な人生 』(デヴィッド・フィンチャー監督 2008年制作 NHK・BSプレミアムにて)。
ブラッド・ピットの映画は結構見ていると思うのですが何故か拙ブログでは挙げていないみたい。
ブラピファンの某女性と『 ジョー・ブラックをよろしく 』ってイイ映画ですよねーと盛り上がる機会があって、それ以後なんとなくブラッド・ピットのことが(彼が失顔症という病をカミングアウトしたこともあって)以前にも増して気になっていたのでした。
F・スコット・フィッツジェラルドによる原作は短編ですが(未読です)、たっぷりの哀切感と短い青春の煌きとともに巨編に仕上げられた映画です。ストーリーテラーでもあるデイジーを演じたケイト・ブランシェットはさすがの存在感で、大好きなティルダ・スウィントンもとても素敵でしたが、やっぱり主演のブラッド・ピットの魅力が大きい作品だったと思います。バイクを駆るシーン(特に赤のインディアンでの)は本当にクール!
愛する人と共に老いてゆける幸せは得られず、共有できる時間のあまりの短さが悲しすぎて・・・だから妻と娘を残して姿を消したベンジャミンの行動が私としては悔やまれ、しかしそうせざるを得なかった彼の精神状態も私としては解りたいと思うのでした。
■ 本 ■
昨年ラストに読んだ故・山本文緒さんの闘病記『 無人島のふたり 』はやはり辛く、衝撃でした。
この本については改めて別の日に綴りたいと思っています。
■ 2022年の ドキュ72 ■
昨年に続いて今年もNHKの『ドキュメント72時間 』から。
恒例で12月30日には「視聴者が選ぶBEST10」発表がありました。
1位作品は、これがそうなるだろうなぁと思っていた回(「どろんこパーク 雨を走る子どもたち」)でしたが、幼い子供たちにとっても生き辛いこの世の中で、彼らなりに前を向いて行こうとしている姿が鮮烈でした。
りんたろうクンが死なないでいてくれてよかったし、ケイスケくんもケイスケくんのお母さんも‘何処かへ消えて’しまわずにいてくれてよかった。
5位だった「ゆめまぼろしのテーマパークへようこそ」は私としては‘推し回’でしたが、BEST3に入るより5位くらいの方が丁度よい存在感かも、です。
私的には BEST10には入っていなかった好もしい回も他にありましたが、それはそれで心の中で密かに支持していようと思います。
今年も「ドキュメント72時間」、楽しみです。
■ そして、、、ヒロシのぼっちキャンプ ■
以前にいっとき観られなくなっていたのですが、そのあと放送再開、以来ずっと録画して観ています。
黄昏から夜の火を焚く風景は勿論イイのですが、朝靄に包まれた翌朝のテントでちょっと‘兵どもが夢の跡’的なヒロシさんの表情と毎回変わるエンディング曲がなかなか良くてやっぱり見続けてしまう番組です。
でもいつか、撮影スタッフさんもいない、誰かに見せることも意図されていない、‘本当のぼっちキャンプ’のヒロシさんを見てみたい気がします。
2023年、皆さんにとって 笑顔になれることが一つでも多くなる一年でありますように。

2022年12月25日
舟を編む ( BS. P 録画鑑賞 )
この一週間、寒かったですねー。
時折り雪も舞って風は肌を刺すように痛くて・・・帰れる家があることや、いろんなことに改めて感謝しないといけないなぁと感じました。
録画していたNHKBSプレミアム12月12日放送の映画『 舟を編む 』( 石井裕也監督 2013年制作 )を観ました。公開時にはスルーしていた映画でした。
< story >
2012年本屋大賞に輝いた三浦しをんの小説を実写映画化。
玄武書房に勤務する馬締光也(松田龍平)は職場の営業部では変人扱いされていたが、言葉に対する並外れた感性を見込まれ辞書編集部に配属される。新しい辞書「大渡海」の編さんに従事するのは、現代語に強いチャラ男・西岡正志(オダギリジョー)など個性の強いメンツばかり。仲間と共に20数万語に及ぶ言葉の海と格闘するある日、馬締は下宿の大家の孫娘・林香具矢(宮崎あおい)に一目ぼれし……。 ( ※映画情報サイトよりの転載です。)
終始 穏やかな気持ちで観られた映画でした。
辞書作りにかかわる人たち(その周囲の人たちも含めて)の長きに渡る日々が静かに、時にユーモラスに描かれていました。
紙の「辞書」。
ネットであらゆる言葉が瞬時に説明されてしまう今の便利さの裏で、次元を異にした、ある種‘おごそか’ともいえる世界でその存在を息づかせ続けているのだなぁ。
膨大な作業とそれにかかる時間、常にどこかで生まれている「新語」と、たとえ使われなくなってしまったとしてもその足跡は残しておきたい旧語の存在。辞書作り、そして言葉というものの奥深さを改めて思い知らされました、とても勉強になりました。
この映画、人間の悪意や不幸な(不幸に泣く)人が出てこないところが一つの魅力なのかなと思いました。
主人公の光也は若くして一生を捧げられる仕事に出会え、一生を共にする伴侶にも出会えた(しかも一目惚れ!)。光也は下宿の大家であるタケ(演じるは渡辺美佐子さん)に「若いうちに一生の仕事を見つけて、それだけで幸せなんだから。」と言われていましたがまさにその通りかと。タケの台詞には実に的を射た、含蓄のあるものが多かったです。
光也を取り巻く周囲の人物たちも、皆それぞれにある意味自分を貫き、それが決して悪くはない歩みとなっていました。辞書の完成を見ずに逝った編さん長 松本(演じるは加藤剛さん)にしても、よき人生だったと私には思えます。
光也の恋を成就させようと辞書チームの皆がエールを送るシーンは温かくて好もしいですね。( 光也による「恋」の注釈の最後の2行は 私としてはちょっとどうかと思いましたけれど…成就した時って結構もっと複雑なんじゃないのかなぁと… )
描かれていなかった 秘めた側面の顔をちょっと見てみたかったのは、後年に辞書チームに配属されて来た岸辺みどり(演じるは黒木華さん)でしょうか。でもそれが描かれていたら全く違うトーンの映画になりそうですが。
あと、オダジョの彼女役だった池脇千鶴さんはやっぱり上手い女優さんだなぁって思いました、イイですね。
街の大通りの植込みがいつの間にか来年の干支の 兎 の葉牡丹に植え替えられていました。
まだいろいろと今年を(今年のアカンかった事々を)引きずっている私にはハッとさせられたことでした。
「あれこれ考えてばっかりおらんと ちゃっちゃと来年に向かわなあかんで!」と言われているようにも感じました。そうですよねぇ・・・。
皆さん どうぞ佳いお年をお迎えください。
